降臨賞に関してエトセトラ

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【降臨賞】空から女の子が降ってくるオリジナルの創作小説・漫画を募集します。

条件は「空から女の子が降ってくること」です。要約すると「空から女の子が降ってくる」としか言いようのない話であれば、それ以外の点は自由です。

イン殺さんのところで開催された「降臨賞」に参加しました。
350ブクマ128作品とかあほみたいな数が集まったので自分のを抜き出しておきます。一応作品群を流れの中で読みたい方向けに言えば、No.108の作品です。

部屋に入ってくるなり、弟子は叫んだ。
「親方! 空から女の子が!」


親方は一喝した。
「女の子なんかどうでもいい!」
そのあまりの剣幕に、弟子は怯んでしまう。
「私が待っているのは……そんな女の子なんかではないのだ」
親方は握り締めたこぶしを力なく下ろしうなだれる。
少女は墜落して死んだ。
それからも女の子は度々落ちてきた。だが、そのどれもが親方を満足させるものではなかった。
「今日も実り、なしか……」
一日の終わり、親方は満天の星空を仰ぎ、呟く。
硬いものを叩き続ける職業柄、彼の手はボロボロになっていった。あるいは、それは緩やかな自傷行為だったのかもしれない。


季節は流れた。春が過ぎ、夏が過ぎ、秋が過ぎていった。
変化は突然に訪れる。
「親方! そ、空から――」
「女の子か? もううんざりだよ……私が待っているのは、そんな女の子じゃない……」
「違うんです親方! 今までのとは、違うんです!」
親方は不承不承ながら表に出てみた。
いつものことだと思っていた。
だが。
天空から、少女の姿が視認できるにつれ、親方の顔色は変わっていった。
「あ、あ……」
少女の姿はどんどん大きくなっていく。こちらに向かって近づいているのだ。
地上まで、30メートル、20メートル、10、5、4、3、2――そして――
身の丈六尺ほどになった少女は、その巨躯にも関わらずふわりと舞い降りた。


「よく、帰ってきたな」
少女の目からは滂沱の涙。
親方も泣いている。
少女は声を震わせながら奏上した。
「はい、親方……、帰ってきました、」



高砂親方



それは、少女としか呼べない代物だった。
少女だから逃げる。弱いから。
それでも心の中にキラキラ輝くダイヤモンドの輝きは、消えはしなかった。
少女だから強い。強いから、傷つけてしまう。
己の出自をうらみ、心無い言葉を吐き、記者の国柄を差別したこともあった。


刮目しろ。
この冬、処女のような繊細さと、凜冽たる寒風のような芯の強さを併せ持つ、最強の少女が帰ってくる。


たった4.5メートルの円形の中に、少女の心と誇りと愁いを乗せて。
己の進退まで賭して。



平成の大横綱



蒙古よりの王者



空から、朝青龍が降ってくる。


<解題>
イン殺さんの賞、そして「希少性」を求めるということで、変化球で行こうということだけは最初から決めていました。一応最終日まで待って、出てない発想で勝負するということで。
そこで、降臨物といえば誰しもがまず「親方! 空から女の子が!」を想像してしまう訳ですが、それを利用して「親方」叙述トリックを考えた……のですがそれに付随する物の方が強すぎてそういう作品になってしまった。
ま、時事ネタでもありますし(天空から舞い降りて初場所に向かうというのか)、それなりに面白くなったし発想のオリジナリティも出せたのでいいかな、と。ラストはなんでちょっとダークナイトっぽいねん、と自分でニヤニヤしている。
強いて言えば、ルール違反賞が貰えなかったのが残念だった。もっと吹っ切ればよかった。ファックに気合が足りなかった。しかしharutabeさんにお褒めの言葉を頂けたので満足です。


でもさー、終了後に気持ち悪い展開になってますが、審査がどうのこうの言って文句つける人はなんなんでしょうね。で、自分が落ちたからどうこうじゃなくて大儀がどうのとぬかしやがる。人が造りし作品に公正な審査を求めるならマークシートでも書いて提出しやがれトンチキ、と思わんでもない。
それでイン殺さんも弱気になってしまっていて、なんか色彩の暴力とか抜かす隣町のババア二人のためにみんな微笑ましく思ってた家のペイントが塗り替えられるみたいな構図になっていて大変気持ち悪いので、イン殺さんはこれに懲りずに、思いついた面白いことをまたいつでも実践してほしい。
暇があったら降臨賞お気に入り作品とか僕も選びたい。