『少女マテリアル』/鳴子ハナハル

かみちゅ!」漫画版などで絶大な人気を誇る鳴子ハナハル初の成人向け単行本であり各地で歴史的な売上を記録している本作です。

少女マテリアル (WANI MAGAZINE COMICS SPECIAL)

少女マテリアル (WANI MAGAZINE COMICS SPECIAL)

なんだか身を置いている界隈だとこれを買うのがもはや紳士のたしなみであるぐらいに思えてきて買ったのですが、想像以上に良かった。絵で売れてるのか話題で売れてるのか知りませんが、メランコリックで綺麗にまとまったストーリーは「エロ漫画」というだけでスルーするにはあまりに惜しすぎる。


『少女マテリアル』と宣言するだけあって、描かれているのは性的搾取の対象としての少女ではなく、「少女」の自意識そのものです。実際、少女の一人称で描かれるエロ漫画ってあんまりないんじゃないでしょうか。憧れの男子にキスされた夜に枕を抱えてごろごろ悶える少女や、同級生の女の子との叶わない恋に悩む少女は、あまりに主体的な意識を持った少女で、なるほどハードなエロ漫画読みの方々が「実用的でない」と言う気持ちはわからんでもない。しかし、性的利用を求めて買うのでなければ、漫画として見ても近年稀に見る良作短編集です。むしろ女性にこそ読んでほしい。


一番好きだった作品は、「明日の私にヨロシク」ですね。
ユーモアがあって、悲劇でもあるけど見方によっては幸福であるという。エロゲでもそうなんですが、ドラマを追及した結果生まれる、絶望を押し殺して、そこに希望があるとだけ信じて体を重ねるようなやるせなくて切ないセックスってほんとにツボなんですよね。18禁でしか描けない表現ですよね、そういうのは。


「嬉しかったって事が書いてあるのを見るのは 少し… 悲しくなる… 」


いやーめちゃめちゃよかった。おすすめおすすめ。
好きな作品:「明日の私にヨロシク」「ヒタイ」「2/4ツヅキ」「スクランブルドエッグ」