Void Stranger
ハード:PC(steam、itch.io) 定価:1400円 メーカー:System Erasure
(日本語未対応ですが有志による非公式日本語化パッチあり。英語得意でなければ基本的には入れるのをおすすめ)
(プレイ時間:73時間)
神ゲーでした。
フィンランドのゲームクリエイターたった2人が作り上げた、インディーならではのあまりに尖りきった鋭利なゲーム。
基本骨子はGBライクなビジュアルの、いわゆる「倉庫番」ゲームです。しかもプレイの大部分が数十時間にも及ぶパズル無間地獄。それでも、このゲームのストーリー、キャラクター、音楽、演出、難問パズル、システム、そのすべてが心に深く刺さったまま抜けそうにありません。
数年前にプレイした「Outer Wilds」が僕にとっては生涯ベスト級のゲームで、いまだにその幻影を求めてゲームをしているところがあるのですが、個人的にはここ数年で一番それに匹敵するぐらい好きなゲームになりました。
ただ、悩ましいのはこのゲーム、「いいから何も調べずにプレイして」と言うのはあまりにも乱暴というか、凄まじく人を選ぶゲームでもあります。
Outer Wildsの時に「かーっ、このゲーム人を選ぶからなーっ」とか言っていたものの、Outer Wildsの「人を選ぶ度」が60だとしたらVoid Strangerのそれは200ぐらいある気がします。
はっきり言って、僕にとっては神ゲーでも、向いていない人にとっては果てしないお金と時間の無駄になる可能性が大いにある。
その不幸な出逢いを避けるため、ゲーム紹介と共に最低限の忠告だけはしておきたい。
どういう人に向いていて、どういう人に向いていないかを。
ちなみに、向き不向きの言葉を尽くす前に、ゲームに詳しい人が類似ゲームをやっていれば説明は不要だと思うので、まず共通点のあるゲームの名前だけを挙げておきますが、『The Witness』『LA-MULANA』『FEZ』、そして『Outer Wilds』です。パズルは難しめですが『Baba is you』よりは少し簡単かなってぐらい。
これら全部のゲームが好きだった人(キレなかった人でもいい)ならここから下は別に読まなくても耐性は大丈夫です、時間があれば絶対やりましょう。
では、このゲームに向いていない人の条件を述べると……。
①一本のゲームに数十時間かける余裕がない人
このゲーム、普通に納得行くまでプレイするには50時間~100時間はかかると思います。
しかも、プレイ中「なんとなくこのゲームの底が見えてきたかな? だいたいこんな感じだったかな」って思った瞬間、「ざんねーん、もっと深いでーす!」って奈落に突き落とされます。それも1回や2回ではなく数回。
絶対に、時間の余裕がない時にやってはいけません。
もしやってしまったら、あなたは魅力的なキャラクターやストーリーの行く末が気になり過ぎて何も手につかなくなってしまうでしょう。
②パズルゲームが嫌い、苦手
基本はパズル無間地獄です。
③忍耐の許容度が低い
プレイヤーに強いるものが非常に多いゲームです。
この倉庫番にアンドゥはありません。「今どき」です。また、数時間が無駄になることも普通にありえます。おそらく、それはゲームが表現したいことを伝えるのに必要なものだと思うのですが、許せない人もまあいるだろうな……という感じです。
当然のように説明や誘導も最小限。インディーゲームでしか許されない建て付け。万人にウケることなど考えずクリエイターが作りたいものを作ってこそのインディーゲームでもあると思っているので、それを許容できるかどうか。
……とはいえぶっちゃけた話、パズル部分で延々と考えてどうしても解けないとか、何か途方に暮れてしまうようなことがあったなら、Steamのガイドページなどから若干のヒント類を探して見ちゃってもいいような気もします、個人的には。(その……僕も若干ね……テヘヘ……)
もちろんある程度自分で考えるべきゲームではありますが、どうしてもの部分をいくらかのヒントに頼ったとしても、魅力が大幅に減じるようなゲームでもないと思います。単純にパズルを解くだけのゲームではないので……。
ただ、少なくとも苦痛を感じる程度にはがんばりましょう。
動画や実況で済ませるのはもったいないです。
その苦痛があなたのものであるからこそ刺さる物語、そしてインディーゲームでしか成立しない表現があります。
とにかく、僕がこのゲームをプレイしていた一ヶ月ぐらいはただひたすらこのゲームのことだけを考え、その時間は非常に幸せでした。
でも足りない。僕はもっとネットでたくさんこのゲームの話がしたいし読みたいし、ファンアートももっと見たい。考察ももっと深く考えたい。
なんつうかこのゲーム、噛んでも噛んでも味がするんだよお! こんなのOuter Wilds以来だよほんとに!!
このゲームに向いている人は一本のゲームを気が済むまでしゃぶり尽くせる人です。適性のあるあなた、一緒にVoidに堕ちていきましょう。あとはがんばってください。
なお、ネタバレありで語りたいこと(主にストーリー面での考察)もたくさんあるので、後日別のネタバレ考察記事も書こうと思っています。
→2024.5.28 書きました。完全ネタバレでストーリーの解説をしています。クリアした人のみどうぞ!