『ソーシャル・ネットワーク』/デビッド・フィンチャー

http://www.socialnetwork-movie.jp/

素晴らしい。
役者、脚本、演出、全てが完璧。
これだけ会話主体の地味な映画でありながらも、120分緊張感を一切途切れさせずに見せるフィンチャーの手法にまず脱帽する。
世界最大のSNSフェイスブック」創設にまつわる実在の人物や事件を基にして創られたこの映画には、美麗なCGも、派手な特撮も、ましてや気分を高揚させるようなカタルシスもない。そういう意味では普通の中高生やライト映画ファンにお薦めできる映画ではないのかもしれない。
しかし、ラストシーンは映画史上に残る、「ぼっち」の人間なら号泣せざるを得ない名シーンであった。少なくとも、Twittermixiなどで「繋がり」を失った経験のある人間なら確実に共感できるだろう、映画史上最もぼっちの心を打つラストシーンです(マジで)。自分は映画館を出て30分ぐらい歩いたところで、じわじわ心に効き始めて本当にその場から動けなくなってしまった。このラストが心に響かない人はたぶんすごく幸福で、不幸だ。
そして浮かび上がってくるのは、映画のタイトルが『フェイスブック』ではなく、『ソーシャル・ネットワーク』であるということの意味。
そう、これは「ソーシャル・ネットワーク」=コミュニケーションとは何か、人と人との繋がりとは何かを描いた物語である。それも現代という時代にこの上なく適切な素材――「フェイスブック」で。このコンセプトが秀逸すぎる。


音楽の使い方もまた特筆すべきものとして挙げられる。
まず、NINのトレント・レズナーがめちゃめちゃいい仕事をしている。
そしてエンドロールに使われる曲のセンス。これもごく初歩的な洋楽の知識があれば、「ここでそれかーー!!!」と軽く感動すら覚える。是非ネタバレなしで観てほしい。
ちなみに予告編にのみ、Radioheadの超名曲「Creep」のカバーが使われているのだが、これも本編のどこかで使ってほしかったなあというのが正直な気持ちだ。なにしろ、この映画にピッタリの歌詞を持つ曲なのだから。

I want you to notice   君に気づいて欲しいんだ
when I'm not around   僕がそばにいなくても
You're so fucking special   そう君は特別なんだ
I wish I was special   僕も特別な存在になりたかった


But I'm a creep   でも僕はキモい奴
I'm a weirdo   変わり者なんだ
What the hell am I doing here?   いったい僕はここで何をしてるんだろう?
I don't belong here   ここは僕のいるべき場所じゃないのに
                     『Creep』-Radiohead


フェイスブックに搭載されているボタンは、「友達になる」ボタンである。これって、よく考えたらすごいことである。
残酷なまでに「友達」がデジタルに可視化されるこの世界は、既にディストピアに片足を突っ込んでいるのかもしれない。
なんてことまで思ってしまったり。
いや、本当に良かったです。
この映画がアカデミー賞獲ればいいなあーー!