人類は衰退しました(2)読了&解釈(ネタバレ)

人類は衰退しました 2 (ガガガ文庫)

人類は衰退しました 2 (ガガガ文庫)

てをやすめずによんだですー?


そして大満足の内に本を閉じました。
全開ですね。
これは紛うことなきロミオ作品です。
素晴らしすぎる。
1話目は有名作品のパロディをいくつも交えつつ、凶悪度を増したギャグ、焦燥感と疾走感に満ちた展開、零す所無く収束させる手際――。最後まで手が休まりませんでした。
そして2話。
うおおおお!!
これは、完全に「C†C」「イマ」のロミオの新作だ!!
1巻と違って、ネタバレに配慮する必要さえある。
正直、エロゲだとボリュームがあるもので、近年ロミオさんにも伏線を回収できなくなることがしばしばあるのですが、一話完結のこの形式だと、その心配がないので綺麗にまとまってて流石と唸らせられます。


ということで折りたたみます。以下未読者ネタバレ注意。


妖精さんのたちの、じかんかつようじゅつ」解釈


ということで。
ループですよ。
待ちに待ったロミオのループ物。
ハードSFとアイデンティティ
折り込みインタビューの「懐の深い作品にしたい」「人類を続けていきたい」という発言の意図が良く解りました。
妖精さんの「人知を超えた科学力」によって、どんなSF設定でも無理なくロミオさんは利用できる場を得たんですよ。1巻のようなほのぼのストーリーにも、2巻1話のようなスペクタクルにも、2話のようなタイムスリップを含む無茶ハードSFにもできる。この設定は見事ですよ。いくらでも続けてください。
脱線しますが、228P〜231Pなんか、もう完全に『イマ』のBlogの文体じゃないですか。もう大好きすぎる。この文体が好きすぎる。

 かつての栄華を、生活の知恵へと落とし込んでいった。
 世代を経ると、世界は変わる。
 科学の面影を忘れた子らにとって、科学の知恵は論理ではなく儀式だった。

 それは洗練という名の忘却をともなった。

かっくよすぎる。


さて、お話の解釈。
正直言って、この話は、読む人によって解釈が分かれるほど難解だったりしますが、とりあえず自分の解釈として書いておきます。
自己を規定するものは他者の視点でしかないという哲学は、「C†C」以降のロミオ作品にはしばしば用いられるモチーフですが、今回はアイデンティティ喪失者として「助手」がいた訳ですね。
そんな中、妖精さんの発生させたループ(クローンを禁止されたから時間軸をいじって増やしてしまおうという発想に脱帽)の中で、過去に遡った孫娘は若き頃の祖父に出会い(この時に強奪された日時計を「現代」で孫娘に渡している。なら日時計はいったいどこから来たの問題とかも、藤子Fすこしふしぎテイストに満ちあふれてて素敵)、祖父とやや性的な含みもある交流を通じ(なんたるインモラル)、仄かな恋心と「理想像」を抱き(父性が理想でうんぬんのフロイト的解釈もできそうです)、さらに孫娘の「認識をかすめ取れるお茶会」を経由する数十度のループを経て「助手」は自我を磨き(いわゆる「ズル」)、アイデンティティを獲得するに至るのだった……。
今の段階ではそう解釈しましたが。ううん、言葉にしてもやっぱすげえよ。この話。
ちなみに287Pの孫娘の羞恥は、315Pで「プレゼントされたなんて美化して」って言ってることから、あの時出会った少年が祖父だったと気付いたんですね。


しかし助手が孫娘の理想をもってアイデンティティを得たなら、あれだな。最初からフラグが立ってるということで。繁殖展開ですか。ラストでもすげえ仲良いし。
これは18禁で続きを書いてもらうしかないですな。