『ヤンデレ大全』雑考/グロが書きたきゃヤンデレ書こう!

ヤンデレ大全 (INFOREST MOOK Animeted Angels MANIA)

ヤンデレ大全 (INFOREST MOOK Animeted Angels MANIA)

これはすごくいい本だと僕は思います。
ムックなので買わないとすぐに書店から消えると思われ。いそげ。
ヤンデレの土壌が、18禁ゲームを堆土とするものである性質上、それらのゲームに耐性のない方にお勧めはしませんが、大判フルカラーの本はそれだけで眺めてて楽しいです。
勿論「なんであのキャラが載っていない」などの文句もあるとは思われますが、個人的には妻(ハラキリ冬子)が紹介されていたので満足です(そういう問題か


中でも、論評のページ、「たまごまごごはん」のブロガー、たまごまごさんの考察が白眉。
なぜヤンデレに惹かれるのか、という説明で、
ヤンデレキャラは通常の萌えキャラと違い、恐怖が先行し、その後に「救ってあげたい」と思うことによって、「アスファルトの下からのびる芽は非常に強い」ように、より強い萌え息吹になる、という視点に目から鱗が落ちた。なるほどね。その他にもたまごまごさんは普段のブログ以上に踏み込んだ(やりたい放題にした?)考察(と萌え語り)をされておられて、ブログの読者なら必読と言える内容になってます。

たまごまごごはん - 各地の「ヤンデレ大全」紹介と、自分原稿の雑記。
http://d.hatena.ne.jp/makaronisan/20070831/1188495779

てか、やっぱ好きなブロガーさんがライターの本は、買う事によって支援してあげたいという気持ちになりますね。こないだのコミケもそうだったけど。


巻末に載っていたみやもさんの小説「長乃井優子の幸福な食卓」も良かったです。素晴らしかった。
ヤンデレのエッセンスのツボを完全に押さえて抽出して、一つの物語の始まりから終わりまでをこの6ページの分量に凝縮しきったことが凄い。この短い小説だけでヤンデレゲーを一本やった気にさえなれて、『描かれなかった未来』(まあゲームらしく言えば『マルチルート』ってやつだ)まで想像できます。グロ描写もgoodです!これゲーム化してくれないかなあ。


それで、最後にこれは作家視点の話なのですが、グロ描写を大衆小説でやりたい、と思った時に、ヤンデレというフォーマットは大変に有用なのではないかと思います。特に、そういう需要層が確実にある訳ですから。
我孫子武丸綾辻行人が『殺戮に至る病』、『殺人鬼』などで試みた凄惨な描写は、「純粋な本格」ミステリファンからはしばしば拒絶反応をも持って迎えられたのに対し、「ヤンデレ」を読みたがって本を買った読者が「これグロがあるじゃねーか!」と怒ることは殆ど無い訳ですからね。むしろ「School Days」が家庭用に移植されるとならば、「首チョンパのねえ言葉様なんていらねえよ!」という世界です。
そういう意味では、グロ、猟奇の書きたい作家は、どんどんヤンデレ市場に参入したら良いのではないか、と思います。