この二三ヶ月、原稿を書くためにいくつかBL作品に触れてみたわけなんですが、その中で「ジャンルに関わらずすげえ」と思ったのは中村明日美子先生と木原音瀬先生でした。(といってもまだまだひよっこですが)
分野に関係なく、良いものは良いし、すごいものはすごいと言っていきたいというスタンスです。なのでみんなも男女向けとか関係なくなるといいと思うよ。世界が二倍になるよ。
さて、そんな明日美子先生の新刊。単巻完結です。アニメイトで買うと限定カバーが付いてきました。限定カバーがなんじゃこりゃわからんと思っていたら本編後に読むとわかる仕掛けになっていた。
まず中村明日美子を何から語るって言ったら線なわけで、やはり、この人の描く線は相変わらず美しすぎる。
曲線の引き方だけでぞくぞくする。線だけでエロい。むしろ線がエロい。
その線で構成される世界なんだからうわあ大変だ。おまつりだ。前より進化してると思った。
内容の方も、いきなり、女を殺してしまった男が高校時代のいじめ相手に死体処理を頼むところから始まるという、かなりハードなものになっています。
ある種のピカレスクものでもあり、共犯関係になりお互い精神的に摩耗しながらずるずる愛欲に嵌っていくなんてのは、僕なんかはBLに浅いので真っ先に手塚先生のMWを思い出します。で、MW好きなわけです。
そんな退廃感と、耽美的な明日美子先生の線が合ってなおさらいい感じです。
最終話の展開が一番良かった。
何かが欠けている人間同士がそれを埋め合わせようとする(痛みであっても馴れ合いであっても)というテーマは、ロミオ先生はじめ自分のツボど真ん中っていうか、そういう要素がないと好きになれないぐらいなのですが、むしろ自ら欠けていってまで一つにまとまろうとする意思を見たのは結構自分の中になかったパターンだったので、良かった。
作中に繰り返し出てくる、人間は互いに分かれた半身を求め合うっていう話はプラトンの『饗宴』からの引用なわけで、もうあちこちの作品で手垢が付きまくってる寓話だと思いますが、それでもこの話を出されるとぐっときてしまうのはそういう趣味なのでしょうがない。しょうがない両性具有萌え。あえてふたなりでなくアンドロギュヌスと呼びたい。
あと単体萌えでいうと、僕の中の女脳の部分が、高校生時代のみつお(黒毛)が好みのタイプすぎてたまらないと鼻息まばらに興奮しながら訴えかけていました。黒髪の美しい悪役が大好きみたいです、あの子は。
最後にくだらない話なんですが、『みつおとミツオ』と聞くと、僕はどうしても藤子F先生の『みきおとミキオ』を思い浮かべてしまいます。念頭に置いてネーミングしたんでしょうか気になるところですが、まあ普通の読者にとってはどっちでもいいところだと思います。