生き延びるためのラカン/斎藤環

生き延びるためのラカン (木星叢書)

生き延びるためのラカン (木星叢書)

先日、精神分析のカリスマ、ラカンなるものを読破しようとした所、その難解さに挫折した。だから解説書から入門する事にしました。
これは萌え界隈で著明な精神科医斎藤環によるラカンの入門書。
「日本一解りやすいラカン解説書」を標榜するだけあって解りやすさが異常。こんなに咀嚼してあって本当にラカンと呼べるのかね。まあ中学生でも読めるらしいので、手っ取り早くラカンを知りたい人、ラカンに興味がある人の始めの一歩には凄くお薦めです。私は三時間で読みました。
問題点はラカンの思想に、強引なまでにたまきんの持論を何でもかんでも結び付けていて、しかもその境界線が引かれてない事でしょうか。あんたそれが言いたいだけやんけー。世の中の殆んどが何でも説明できるラカンって本当に便利。恐らくラカンという人の理論自体、学術論文ですら人によって解釈が分かれるようなうろんなものである(それってどうなのかと思わんこともない)故にそういう事が可能なのでしょうね。ラカニアンという信者の存在もその懐の深さに礎を抱くのか。
あと、理論自体にいくつかの反感とか違和感を覚える事もないではなく。
まあ精神分析という学問は、深刻に捉えずにテレビの占い程度に考えるのが良策なのでは。と思う。
ああ楽になった。人の心はんな単純じゃねえー。
フロイト学派は何でもやたら性に関連付けて考える思考癖がある(気がする)のですが、男女の性別差ってそんなにでかいのか? と最近の自分はトランスジェンダー推奨モードなので懐疑的かつ哀しくなりました。
要するに万物の中心はファルス。ファルスってのは何かというと心のちんぽだ。ちんぽは、欲望は満たされても欲求は満たされない。その虚しさこそが人間存在の本質である。
よって男性質は対象a(欲望の原因)にファルスを代入し、女性質はファルスを羨望する。
そういうつまらん事で世界の仕組みが全部説明できる、となるといろいろ憂鬱になるね。
確かそんな感じですが、とはいえまだ読みが浅いので、今度は新宮一成さんのラカン論を読もうと思います。
「生き延びるための」という題なものの、ラカン理論の結論として絶望ばっかなのはどうなのか。まあ、それに却って救われる事もないとは言い切れないですが。