全ての中二病患者へ捧ぐ――『AURA 〜魔竜院光牙最後の戦い〜』
- 作者: 田中ロミオ,mebae
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2008/07/19
- メディア: 文庫
- 購入: 43人 クリック: 1,636回
- この商品を含むブログ (396件) を見る
中学の頃カッコいいと思って
怪我もして無いのに腕に包帯巻いて、突然腕を押さえて
「っぐわ！・・・くそ！・・・また暴れだしやがった・・・」とか言いながら息をを荒げて
「奴等がまた近づいて来たみたいだな・・・」なんて言ってた
クラスメイトに「何してんの？」と聞かれると
「っふ・・・・邪気眼（自分で作った設定で俺の持ってる第三の目）を持たぬ物にはわからんだろう・・・」
と言いながら人気の無いところに消えていく
テスト中、静まり返った教室の中で「うっ・・・こんな時にまで・・・しつこい奴等だ」
と言って教室飛び出した時のこと思い返すと死にたくなる
さて。
田中ロミオ先生、渾身のオリジナルラノベ新作書き下ろしです。
先に結論を言いますが、今まで僕の期待を裏切ったことのないロミオ先生のこと、この作品は間違いなく傑作です。それだけは断言します。グイグイ読ませる筆力、ニッチでありつつ誰かしらのツボを付いてくる幅広いギャグ、落涙にさえ及ぶクライマックスの感動、全てをきっちりと収束させる完璧な読後感、完璧です。
ロミオ（ゲーム）作品をプレイ済みの方には「ユメミルクスリ」×「おたく☆まっしぐら」÷２と言えば通りがいいでしょうか。「人類は衰退しました」辺りよりも、人間同士の繋がりをテーマにした作品ということで、遙かに期待していたロミオ。
しかし、僕はこのレビューを書くにあたり、幾度となくフォームを開いては閉じ、開いては閉じを繰り返しています。
こんなことは初めてです。何故？
何故なら、
この作品は、ある特定の過去や経験を持った人間に対しては壮絶な破壊（自爆）力を持つ小説だからです。
僕が誠実にこの作品の感想を述べるとすれば、その経験についても触れなければならない。
そこで文頭に貼った有名な「邪気眼」コピペの話になるわけですが……
皆さんどうです？ これを見て"痛い"と思われますか？
いや、単刀直入に言いましょう。
高校時代に、自分で自分の名前を付けたことありますか？
本名で呼ばれたら怒ったり返事をしなかったりした経験がありますか？
僕はあります。
まあ詳細までは死んでも言いたくはないのですが、難しい漢字とか破滅的な漢字を使用した一般的に言えば"DQNネーム"ですね。
しかも、ここで一番恥ずかしいのは、僕はその名前を使い始めた当初、名前に使用している漢字を間違えて覚えていて、サインを間違えて筆記までしていました。
普通にサインを多用している時点で恥ずかしいのに赤っ恥誤字までしていたのです。
そして、高校末期になると、私はクラスではカッターナイフを手に持って歩くようになりました。
種々の裏切りなどを経験して、周囲を全部敵だと思うほど病んでいたこともありますが、
「ギザギザハートなんです私 触るものみな傷付けるよ」アピールです。
教室内でのいわゆる自傷行為やＯＤもありましたね。
私が過去を懐古した記述をする場合、大抵「高校時代は暗黒時代」で済ませていることからも察してください。
と色々ありましたが、そんな自分も、今思うと、まあ、
デロリアン乗って矯正しに行くかいっそ殺してやりたい
ぐらいにどうしても思っているわけです。*1
そういう経験がある方には、この作品への感情移入度が半端ないことを約束します。
あまりの辛さに目を背けたくなる描写もあるかもしれない。いじめ等あり、中盤の描写は、ロミオ作品でも１、２を争うほど容赦ないです。
しかし、それだけに、クライマックスの台詞を読んで我々が落とした涙と、無難な人生を送ってきた方が感動して落とした涙では体積が同じでも質量が違うのではないかと思わせるほど。感情を移入できた分だけ、この作品はあなたにとって何らかの意味をもたらすことになるでしょう。
そんな感じで僕より大なり小なりあれど暗黒青春を送るなどしてきた皆さま。
これは、過去の僕たちへの葬送曲（レクイエム）です。救いの調べを紐解きましょう。
現在進行形で暗黒青春の皆さま。
この小説はあなたたちが生きる救いになることでしょう。（ちなみに「CROSS†CHANNEL」とかをやって頂けると、更なる救いになることもお約束します）
そしてもちろん通常の方もロミオ先生の筆力で楽しく読むことができます。
萌え学園ラブコメとして読むことも可能ですね。いや、たぶん大抵の人はそうやって面白おかしく読める気がします。
そうしたら僕のこの文章での煩悶はなんだって話ですが、それはそれ、これはこれで。
＜「AURA」感想リンク集＞
じつに今風の学園ラブコメだった田中ロミオ新作「AURA 〜魔竜院光牙最後の闘い〜」感想 - 平和の温故知新＠はてな
*1:結局今でもそれを引きずって本名を可能な限り忌避したりしてますが
