果てた機械

腐り落ちた駅からの帰り道、鬱蒼と緑茂る廃屋の軒先に襤褸を着た妻が立っていた。
赤と緑の中間の色を身に纏わせて、宙を彷徨うように月の照らす先を凝視している。
ぶう、ぱちぱちと羽を肥大させた醜い蛾が月に身を当てて灼け死んでいた。
隙間から穴の空いた羽を拾い集めて、一つ二つ肉の削げ落ちた手に乗せてやると「あぁ」と呻き声を上げた。
僕たちはもう何も傷付けずに愛することが出来なかった。