コクーン歌舞伎「三人吉三」

先輩が異常に薦めるので渋谷でコクーン歌舞伎「三人吉三」を見てきました(当日券)。
いや、えらかったです。やばいやばい。
歌舞伎というのはそもそも江戸時代においての「大衆芸能」だった訳で、筋の綯い交ぜ融合分離、面白けりゃいいじゃん指向が「伝統芸能」として保護されるあまり停滞してしまったという意見には僕も同意で。
串田和美さんのリベラルな演出は歌舞伎の本質をむしろ突いてるのではないかと思います。
客電が消えてまず流れてくるのは、耳を劈くようなエレキギターのフィードバック。
その胸を裂くような音色に乗せて紡がれる複雑な愛憎模様が、何か訳のわからない感傷に駆られて100メートルを疾走するような切迫感に溢れていて、2時間半をすぐに使い切りました。
グロ好きなんですが、まあ普通に首切ったりするんですが、そこに至るまでの登場人物の思いが苦しくなるぐらいに透明で、愚直で。殺し場のシーンが直接的に描かれる事はないんですが、その方がよっぽど残酷だと思わせられました。素敵でした。
それで、このコクーン歌舞伎のさらに自由な所は、音楽担当が椎名林檎さんで(オリジナル曲も書き下ろしてます)、クライマックスで今まで建物があった場所が取り壊されて一面の雪野原になるのですが、真っ白な荒野に赤い着物と雪を撒き散らして、椎名林檎の曲が流れるというのが、涙が出るほど美しい演出でした。
カーテンコールで、林檎さん本人も来てました。ちなみに同行人は、事前に喫茶店で林檎さんを見たそうなのですが、おっぱいばかり見ていて気付かなかったそうです。