クトゥルー神話に絡めるまでもなくヤバい - 『崖の上のポニョ』/宮崎駿

ポニョ、あの予告からしてゆるゆるな映画だと思い描いていて、
少し前に、「ポニョはクトゥルー神話の話でした」っていうエントリが大変面白いと思ったので↓

てすかとりぽか 『崖の上のポニョクトゥルー神話
http://budouq.blog5.fc2.com/blog-entry-625.html

2008-07-23 - coco's bloblog - Horror & SF
http://horror.g.hatena.ne.jp/COCO/20080723#p1

そういう感じで感想でっちあげようかなと思ってたら、普通にヤバイ映画だったのでそんな気はなくなった。


テーマが「神経症と不安の時代に立ち向かう」ってなってますが、
観てるとこっちがむしろどんどん不安定になってきます。
ストーリーが、支離滅裂にもほどがあります。(それで○○はなんだった、的なもの多数)
登場人物の行動原理、意味わかりません。(中でもお母さんの行動がイミフ。別の話としてビジュアル的に萌えましたが)
終盤の展開に至っては「これ最後に、『全員死んでましたよ』オチで終わるんじゃねえかなあ」、とスタッフロールが始まっても疑い続けていたぐらい不安になる。子供向けに作ったとしたら、ずれすぎている。
ただ。めちゃくちゃすごいんですよ。イマジネーションが。
もう宮崎さんは完全に理屈じゃなくてアニメを作ってます。理屈じゃないんだ。


作中に直線が存在しない。全てが曲線で描かれた世界、壮絶な「水」の描写といい、背景までを含めての全てが「生物」としての存在感を持って迫ってくる。
これって何かでありそうじゃないですか? そう、ドラッグでラリラリになってる人の視点ですよ。
これは宮崎駿のドラッグムービーです。しかし、宮崎駿という超天才がガン決まりになるとこんなヤバいアニメが生まれるんですよ。
つまり怖いといっても、キ○ガイが刃物持ってる、みたいな怖さ。ハヤオにアニメを与えるというのは恐ろしすぎる。何が起きるかわからん。ベクシンスキーの絵画を見て、すごいんだけど不安になるようなああいう感じ。


千と千尋」からの宮崎作品は、テーマ的にも完全に変質したと思っていて(それはつまり、「もののけ姫」で最初に追求していたテーマを描ききってしまったということでもあり、例えまとまってなかったとしてもそのスケールのでかさとエッヂの鋭さにやられてしまう僕は「もののけ」が一番好きなんだけど)
お話を書こうとしていない、あるいはもう書けないんじゃないかという意見、そういう批判も既にネットには勿論あるんだけど、今作に至って、ああ、ついにお話はどうでもいい局地まで来たなと。
これなら納得がいくし諸手を挙げて肯定できます。これは絵画です。
宮崎駿という、ロリコンの超天才の脳内をそのまま写し取った映像です。壮大なパラノイアです。
僕らはもう圧倒され打ちひしがれるしかない。


だから、今回のポニョ周りで、一番の詐欺はあの宣伝の仕方ですね。
ぽーにょぽーにょぽにょじゃないよ。(いや、実際耳に付くしめちゃめちゃ歌ってるんだけど)
EDであの歌が流れるころには、ガキどもは毒気に当てられすぎて唖然としてるし、
ポニョはすぐにかわいくなくなるし、「生まれてきてよかった」じゃねえよそういう映画じゃねえだろ。
また鈴木敏夫のせいか。戦犯め!!


結論。
今までのトトロとか魔女宅とかを期待して行くなら観ない方がいいです。
よくわからんけど凄い狂人の絵画とかを観たいなら最高です。