HateGirl on 15years Resistance

あの頃から、わたしの青春にはドラッグと刃物しかなかった。
鞄の中身が青春の中身だとしたら、わたしの青春は大きく口を開けた峡谷の一番深い所でうずくまる四角いピルケースと同じ姿をしていた。


締め切った窓の無い部屋で研ぎ澄ませていたのは、黒く狭まった自尊心と、赤く濁った鉄の鎖と、不安な心をなんとか繋ぎ止めようとする不細工な形の檻で、学校に居ても、どんな少女達と話をしても、涎に塗れた男の穢らわしい視線に素肌を晒していても、わたしの孤独を共有する事は出来ないのだった。


その日、忌々しい痛みに駆られたわたしは、しとどに股のあいだから血を垂れ流しながら線路を歩いていた。
ぶっきらと鞄に突っ込んだ掌には、いつでも取り出せるように刃の飛び出たカッターナイフを握っていて、誰でもいいから声を掛けて来た男がいたら殺そうと思った。


息がつまっていたのだ。
それを何か、傷付ける事ででも、傷付けられる事ででも、膿を出したかったのかもしれない。
その頃の私はMDのウォークマンのイヤホンから流れてくるシャリシャリした激しい音楽だとかを好んで聴いていたが、それでも父の部屋にこっそり忍び込んで古いレコードを聴く時間が、特別な時間だった。何かを侵しているという気持ちと、ちょっぴりの罪悪感の痛みが、わたしの心を落ち着かせた。


結局そのまま日が暮れて、誰も殺さずに帰ってきた。


あれから、少し大人になって、心に蓋をするやり方が解ってきたのかもしれない。
それでも、今でも、わたしの胸を開くとたぶん、鞄の内にナイフを握り締めながら線路を歩く15歳のわたしが住んでいて、怨嗟と敵意の混じった冷たい視線を投げ掛けてくるのだ。