不定形

精神が不安定

「新しい名前の具合はどう?」 と尋ねると彼女はぎちぎちと腕の関節を回して4本にした。 「名前など一度附いてしまえばあなたのものじゃないの。認識は偏在し、新しい枝葉は陽光を求め貪婪に意識を拡張していく。それ自体ならともかく、主体にはもう意味は…

抑圧

卑猥なこと言いたい。 叫びたい。 悪いが僕はいい大人なんだ。 ちんこうんこですむと思ったら大間違いだ。 具体的に皇居の前で叫びたい。 やんごとなきお子様たちに性教育を施したい。 皇居の鯉に叫びたい。皇居の鯉の口を、卑猥な感じで利用したい。 そんな…

クグツ

彼女は、笑えなくなってもいいわ、と笑った。 僕はあなたの、表層に浮かんだ欺瞞を、いくつでも撫ぜることができる。 どこまでも小さな、 小さな、 傀儡。 僕を救ってくれなかったその喉輪を土星の輪のように取り巻いて、紫色の線が走っている。 ここはまだ…

さくら

同期や一個下なんかはみんなmixiで発表してるので、僕はここで。 今日は大学の卒業判定の日でした。 まあ年度始まった時から、あと数単位だと思って余裕ぶっこいていたんですが…… …… ………… ああ、うん。 卒業決まりました。 ありがとうございます。 大学って…

雪の名残り

樹から落ちた果実が破裂してそのまま染み込んだように、昨日積もった雪はまだアスファルトに振り撒かれたままだった。 歩道を歩きながら、透明に覆われ、凍った灰色が靴の裏でキュルキュル滑るのを楽しんでいると、前を歩いていたサラリーマンが突然、車道に…

蒲団、略奪の歴史と労働の彼此

自由を謳歌する。怠惰を賛美する。全力で。 それはあたかも蜻蛉の生命を想起させる一瞬の煌めきである。 人は私をこう呼ぶ。Not in えんぷろいめん……ええとエヂュケイションなんとかかんとか。 想像したくない。その因果を浴びたくない。 流星に捕まえられて…

脆性破壊

暗がりの中でぼそぼそと動き廻る血液は、頸を吊られた家鴨のようにびくびく身を捩らせて、這い上がってくる蟲を捕らえる造花のように咲いていた。 生まれてから小さな匣の中でこころを切り離す訓練ばかりしていた。 そのせいで、僕がいま君のこころから遠く…

僕の一生の憂鬱を集めると

どの位の量になるんだろう それってさ 世界を撃ち落とすのに充分なはずだぜ

多寡の一輪

君を愛してやろうかと思ったら僕には名前がなかった。

剿滅少女詩人

「そうだ。僕は君が感じているのと同じ不安を感じていたかったんだ。だから少しの意地悪をするよ、それが少しの情愛だと疑わずにするよ」 汽車の煙が溶解して星空を灰色に染め上げた夜、男は美酒に耽溺するような恍惚を持って陵辱を為した。 面識の無い場所…

セミメロンの憂懼

いつ朝が来たんですか 蝉が青い鱗を乗せていたので頭から囓るとメロンの味がしたので 若者たちの間でこの「セミメロン」は限りない珍味としてシブヤを席捲し ご臨終! それはただの蝉です 舌の裏側で絶望が溶けるよ 悲鳴と鮮血は綺麗な音楽の 強いキックスが…